AI統合の本格化 「AppSheetのGemini」登場
今回の発表で特に目を引くのが、AI機能の統合です。「AppSheetのGemini」として発表されたAIタスクは、これまでApps Script やWebhookを介して行われていたAI連携のハードルを下げ、より手軽にAIの力を活用できるようにすることを目指しています。
現在、プライベートプレビュー中となり、2025年前半には一般提供(GA)が予定されています。まず、最初にAppSheetのGeminiでできることは以下の通りです。
- 画像からのフィールド抽出 : 画像の内容を分析してくれます。
- PDFからのフィールド抽出 : PDFの内容から情報を自動で取得します。
- 分類 : レコードを分類して処理を高速化します。
これらのリリースによって、実用的なAI機能の提供が開始されます。
AppSheetのGeminiは、AppSheet Enterpriseプラン向けとなりますが、請求書処理の自動化や顧客対応履歴の要約など、ビジネスにおける様々な場面での活用が期待されます。
さらに、Gmailのイベントトリガーにおける添付ファイルサポートも近日開始予定です。
これによりメールで受信したPDFや画像ファイルを直接AIタスクで処理するといった自動化フローの構築が可能になります。
接続性の向上「統合コネクタ」でセキュアな連携を実現
2025年のAopSheetアップデートでは、オンプレミスデータベースや外部SaaSとの連携も強化されます。従来、AppSheetからこれらのシステムに接続するにはファイアウォールの設定変更などが必要でしたが、「統合コネクタ」の導入により、外部システム側からAppSheetへのアクセスを許可することなく、Google Cloud経由でプライベートかつセキュアな接続が可能になります。
統合コネクタは、ServiceNow、Jira、Salesforce、Cloud SQLなど、様々なサービスに対応する予定で、一般提供開始は2025 年上半期から始まり、年間を通じてコネクタが追加される予定です。こちらもAppSheet Enterpriseプラン向けとなり、現時点ではApplication Integratioというサービスが別途必要になります。
開発体験の向上 : テスト、テンプレート、View、多言語対応
AppSheetでアプリ開発をおこなっているクリエイターやこれからAppSheetでアプリ開発を検討しているユーザに向けた開発体験の向上も行われます。※一部の内容は、既に一般提供が開始されています。
- インラインテスト
これまで自動化のテストを行う場合、ステップごとに個別のテストが行えず、Automationを完全に構築した上で、全てに対してテストを実行していました。
今後の予定では、Automationを構築する際に、ステップごとにデータを選択してテストできるようになり、開発効率の向上が期待されます(2025年前半にAIタスク向けの一般提供を開始予定)。
- テンプレートアシスタント
メールやドキュメント生成などのテンプレート編集機能が刷新され、より直感的な操作が可能になります。
- ガントチャート ビュー
現在、calendar、deck、table、galleryなど11種類がView Typeとして利用できますが、新たに「ガントチャートビュー」が追加されます。
ガントチャートビューの登場により、プロジェクトのステータス管理が柔軟に行えるアプリ開発が実現します。(詳細の発表は2025年後半を予定)
- ローカライズ
AppSheetのビルダーUI自体が、英語以外の複数言語に対応予定です。具体的な言語やタイムラインは第2四半期に発表される見込みです。
ローカライズの複数言語対応の中に、日本語が含まれることを望んでいるユーザにとって大きな注目ポイントとなるでしょう。
- 式の折りたたみ
長い数式の一部を折りたたむ機能が既に提供開始されており、複雑なロジックの可読性が向上しました。( 2025年3月にリリース済)
ガバナンスの強化 :グループの追加、ライセンスのグループ制御
AppSheet Enterprise向けのガバナンス設定では、Googleグループを設定出来るようになっていました。今後のEnterprise向けのガバナンス機能強化として、Googleグループだけでなく、Microsoftグループに対してもガバナンスポリシーを適用できるようになる機能が追加されます。(2025年後半予定)
また、プールされたEnterprise Plusライセンス数をグループ単位で制御する機能(2025年上半期予定)も追加されます。
まとめ : 未来への期待と留意点
AppSheetが示すロードマップは、AIの統合、外部システムとの連携強化、そして開発者体験の向上という明確な方向性を示しており、プラットフォームとしての大きな進化を期待させるものです。特に、AIタスクや統合コネクタは、ビジネスプロセスの自動化や効率化に大きく貢献する可能性を秘めています。
ただし、冒頭でも触れたように、これらはあくまで現時点での計画であり、プロジェクトの遅延や仕様変更は常に起こり得るものです。
ユーザーとしては、発表された機能に期待を寄せつつも、今後の正式なアナウンスや実際のリリース状況を注意深く見守っていく必要があります。
AppSheetが今後どのように進化していくのか、引き続き注目していきましょう。