森田 嶺

【事例】Gemini for Google Workspace を全社導入した理由と効果、そして乗り越えた壁

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私が取締役を務めるYOSHIDUMI(吉積情報株式会社)では、生成AIの活用を全社的に推進しています。Google Workspace を導入している弊社では、そのアドオンである Gemini for Google Workspace を全社員に適用しました。当初は活用する社員は限定的でしたが、現在では有志による勉強会も開催され、日常的に活用する社員が増えています。
弊社が早期導入を推進した理由は、「新しい技術への挑戦」に加え、「変化の激しいビジネス環境に適応するための先行投資」、つまり企業の生存戦略でした。今回は、早期導入の理由と得られたメリット、そして乗り越えた壁について詳しく解説します。

生成AI は莫大な学習データから新たな価値を生み出す

そもそも、生成AIというのはどのような技術なのでしょうか。生成AIは、大量のデータを用いて新たなデータを生成する人工知能の技術を指します。この技術は、ディープラーニングと呼ばれる機械学習の一種を用いて、テキスト、画像、音声、動画などの新しいコンテンツを生成することができます。代表的な例として、 GPT や Claude 、LLAMA、Gemini などが挙げられます。生成AIは、事前に大規模なデータセットを用いて学習し、その学習結果を基に新しいデータを生成します。例えば、GPT や Gemini は膨大なテキストデータを学習しており、人間のように自然な文章を生成することができます。

生成AI が注目される背景

現在のビジネス環境は、非常に変化が激しい状況にあります。今日決めた方針が、次の日に生まれた世の中のトレンドによってピボットせざるをえない状況は幾度となく起こります。ビジネスの現場では、多くの方向転換が求められ、その度に戦略を練り直す必要があり、数年前とは比べ物にならないくらいの活動量が求められ、現場には大きな負担がかかり続けています。

一方で、労働者人口の減少問題は歯止めが効かない状況にあり、2030年には求められる労働者の需要に対して、多くの業種において、供給が追いつかない状況が予期されています。このような予期される未来に対する打開策として、「生成AI」が大きな注目を集めています。

Gemini for Google Workspace とは何か

Google Workspace はWebベースのコラボレーションツール

Gemini for Google Workspace の説明をする前に、まずは前提となる Google Workspace の説明が必要不可欠です。 Google Workspace は、 Google が提供する強力なコラボレーションツールです。企業として、大きな成果を生み出す場合、チームでの連携は必要不可欠ですが、このツールがあれば、チームでの生産性を爆発的に高めることができます。ファイルの同時編集機能や、Webブラウザをベースとしたオンライン会議ツールまで、チーム業務に必要なツールが、わかりやすいUIでユーザーに提供されます。もちろん Google が開発するツールなので、最先端のテクノロジーを取り入れながら日々アップデートが行われています。

Google は Google Workspace (当時は Google Apps )をリリースした2006年当時から、WebベースのSaaSアプリケーションであり、今もその方向性は変わっていません。Office 系ツールから現在の形に移行した Microsoft 365 も現在は Google Workspace に似たような機能を実装していますが、UI/UXに関しては、20年間培ってきた Google に利があると考えています。

Gemini for Google Workspace はユーザーの業務効率化をサポートするAIアシスタント

Gemini for Google Workspace はコラボレーションツールである Google Workspace が生み出す生産性を1段も2段もに引き上げることができるAIアシスタンスツールです。チーム業務を分解していくと、結局のところ細かい個人タスクまで分解されることになりますが、 Gemini はこの個人タスクの一つ一つの生産性を高める効果があります。この細かい部分の生産性向上の積み重ねが結果として、チーム全体の生産性をさらなる高みに引き上げます。

Gemini for Google Workspace を推進する理由

10年以上前からAI研究に投資を続ける Google が積み上げてきた技術力

Gemini for Google Workspace の競合と言えば、 Copilot for Microsoft 365 を想像しますが、この2つのアドオンサービスの違いは、 Copilot が OpenAI の技術に依存している一方、 Gemini for Google Workspace は Google がLLM含めて、全て独自で開発している点です。そもそも、自然言語処理(NLP)に革命をもたらした生成AIという技術が生まれるキッカケになった論文を発表したのは Google であり、これがベースで応用された技術が OpenAI の GPT シリーズです。

BtoB向けAIプロダクトにおける Google の実績

また、Google は現在の生成AIムーブメント以前からAI研究に投資を行っており、数多くのプロダクト(特にBtoB向け)をリリースしています。イメージとして、生成AIというと OpenAI を連想してしまいますが、過去から現在に至るまでのAI技術の進歩は Google によって作られたと言っても過言ではありません。

Gemini for Google Workspace を導入することで得られるメリット

文書作成業務における生産性の向上

上記は一つの一例ではありますが、業務内容が異なる複数の部署で生産性を上げることできる共通業務が存在します。それは文書の作成業務です。文章は社内外におけるコミュニケーションの大部分を占めるプロトコルであり、この部分の生産量を増やすことで、社内外に関わる業務の生産性を向上させることができます。例えば、 Gemini を活用すれば、顧客からの問い合わせや要望へのアウトプット量のスピードを大幅に向上させることができるため、顧客対応の効率性を高めることができます。

それ以外にも、顧客向けのプレゼン資料を自動生成したり、オンライン会議におけるディスカッション内容を自動的にAIで要約、翻訳したり、文書に限らず数多くの業務において、業務効率化と生産性向上が期待できます。

シャドーAI対策

生成AIプロダクトは、国内外で数多く存在し、日々新しいサービスのリリース、そしてアップデートが行われています。プロダクトはWebベースで提供されていることが多く、ユーザーは社内端末以外から、いつでもアカウントを取得し、利用することが可能です。つまり、完全に利用を阻止することは非常に難しい状況になっています。重要なのは、企業として、ユーザーに利便性の高いツールを提供することであり、 Gemini for Google Workspace はビジネス上の業務において必要となる数多くのAIアシスタント機能を備えています。このツールを導入することでユーザーの満足度が向上し、利用が限定され、結果として企業のシャドーAIに対する対策になると考えています。

安心・安全に生成AIを活用できる

Gemini for Google Workspace でユーザーから送信されるプロンプト情報は Google 側で学習することも、データを覗くこともありません。顧客のデータは顧客自身のものであると、 Google はプライバシーポリシーでも明文化しています。また、 ユーザーの活動は全て Google の認証基盤で保護されているため、二要素認証やアクセス管理などの機能により、企業データの安全性が確保されます。世界数十億のユーザーを抱え、最先端のセキュリティ技術を保持する Google が構築する認証基盤を活用できることは、お客様とのビジネス上での信頼関係を築く上で非常に重要なメリットです。

一方で感じた導入障壁の高さ

私は生成AI、特に Gemini for Google Workspace の導入は、企業の成長には必要不可欠な要素だと考えています。しかし、一方で、導入を進めていく上での壁もいくつか存在したと考えています。

何かを変えることは大きなストレスが発生する

これは生成AIに限った話ではないですが、私も含めて何か新しいことを導入する場合、人間の性質上、これまで慣れてきたものを変えることには大きなストレスが発生します。中には現状の課題解決のために、生成AIを積極的に活用する個人は確かに存在しますが、これはかなり少数のグループになると考えています。このグループは、自分自身で生成AIを活用した場合の課題解決の仮説を設定し、自走しアップデートを行っていくため、企業としてはできるだけ制限で縛らないガイドラインさえ設定できていれば問題ないと考えています。しかしながら、導入初期段階でそのような活動を行うグループはマジョリティではありません。重要なのは、生成AIの利用に至っていないグループをどのようにして引き上げるかです。

生成AIの定量評価の難しさ

まず、生成AIの利用に至らないユーザーは「生成AIの活用によって、自分自身の業務が効率化できるというイメージが湧いていない」可能性があるという仮説を立てました。まずは、前述したイノベーター、アーリーアダプターと呼ばれる積極的に活用するグループで実績を作り、その結果を踏まえて、効果を自分毎で実感してもらうというプロセスで進めていくことになりました。このプロジェクトでは、部署毎に課題を見つけ出し、その課題をどのようにして生成AIを解決できるのかの仮説を立案し、実際に一定期間で実施した結果を定量評価で報告してもらうということをおこないました。しかしながら、生成AIの活用によって、前後でどの程度の時間削減が見込めたのか正確な測定は難しく、あくまで主観的な定量評価による報告となりました。

導入には利用者のリテラシー格差を埋めることが不可欠

各グループから得られた定量評価をまとめ、全社的に展開した結果、生成AIに対する全体的な関心度が向上したと考えています。実際にその後に Gemini for Google Workspace の利用申請を受け付けたところ、想定以上の申請を集めることができました(弊社は Gemini の販売代理店を事業としていたこともあり、全社導入となりました)。その次に出てきた課題が、プロンプトエンジニアリングのリテラシー格差の問題です。要は「何を入力したら良いかわからない」「どのように入力すると良い回答が得られるのかがわからない」といった課題です。まずはユーザーにAIの効果を実感してもらうために、最初の一歩を支援する必要があると考えました。

WorkAIzer の導入により、生成AI活用の敷居の高さを克服

 

ユーザーのリテラシー格差を解決するために、弊社は WorkAIzer というサービスをリリースしました。

WorkAIzer は、「使いやすさ」「セキュリティ」に特化したAIチャットツールです。弊社が生成AIを導入するプロセスで障壁となった課題、つまり企業が生成AIを導入する上で抱える課題を解決するために開発されたサービスになります。

ユーザーのリテラシーに応じて様々な選択肢を提示することが重要

ここまで Gemini for Google Workspace の導入メリットについて説明しました。いくつかのメリットをピックアップして説明させてもらいましたが、最も強力なメリットはその前段で説明した Google がこれまで培ってきた実績とプロダクト品質です。 Gemini for Google Workspace はこれまで Google が培ってきた生成AIテクノロジーをアプリケーションとして形にしたものであり、 Google の技術力の高さを実感しやすいサービスであると言えます。

ただ、高い技術力が搭載されたアプリケーションであれば、簡単にユーザーが使ってくれるというわけではなく、ユーザー間にもリテラシーギャップが存在します。重要なのは、そういった課題が再現性がある形で存在することを認識した上で、ユーザーにいくつかの選択肢を持ってもらうことが重要だと考えています。例えば、最後に紹介した WorkAIzer は Gemini for Google Workspace の代替サービスではありません。 WorkAIzer は Gemini と併用して利用できるサービスであり、実際に、弊社でも WorkAIzer を使うユーザーもいれば、 Gemini for Google Workspace を利用するユーザーもいます。

ユーザーそれぞれの成長に合わせて、いくつかの選択肢を用意し、成長を支援していくことこそ、企業がAI導入を推進していく上で必要不可欠な要素であると思います。

森田 嶺
森田 嶺
大学卒業後、 AWS や Google Cloud 等、主にクラウドを基盤とした新規サービス開発の経験を経て、YOSHIDUMIに入社。Google ドライブ拡張サービス「Cmosy」「共有ドライブマネージャー」等、 Google Cloud を活用した自社サービスの開発に従事。現在、 Google 等が提供する生成AIを活用したサービスを開発中。
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