森田 嶺

Google Bard を業務で活用する場合の注意点

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私は普段の業務では使っていませんが、プライベートにおいては最近 Google Bard をガンガン利用しています。これまではメインで活用していたのは ChatGPTでしたが、昨年12月の Gemini (※1)のリリースを受けて、 Google Bard にも触れる機会が増えてきました。
ただ、 Gemini は英語版の Bard に先行してリリースされていますが、現状、日本語版でリリースされたというアナウンスはありません(2023年1月10日時点)。

Gemini は Bard の利用頻度が上がる大きなキッカケにはなりましたが、私が Google Bard を最近利用する理由は、 他の Google サービスとの親和性の高さです。例えば、 Bard には拡張機能があり、クリック一つで YouTube や Google Workspace ツールとの連携が可能になります(詳しくはコチラの記事をご参考ください)。

私はデータ分析や文書作成等、様々な用途で Google Bard を利用していますが、それはあくまで「プライベートにおける活用」に留めています。なぜなら、 Google Bard は業務で活用する上で注意すべきポイントがあるからです。
今回は、 Google Bard を業務で活用する場合の注意点について解説します。

※1 Gemini はGoogle が2023年12月6日にリリースした次世代大規模言語モデル(LLM)です。

Bard が Gemini へと名称変更

2024年2月8日、これまで「Bard」と呼ばれていた生成AIモデルは、「Gemini」に改名されることが発表されました。

最上位の対話型生成AI「Gemini Advanced」も発表し、日本では月額2900円で提供を開始しました。現在、言語は英語のみですが順次日本語にも対応する予定となっています。

また、GeminiやGemini Advanced が使えるスマートフォンアプリが提供されます。

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https://japan.googleblog.com/2024/02/bard-gemini-ultra-10-gemini.html

本記事では、記事公開時点での「Google Bard」の情報について執筆しているため、現在の内容と異なる点がある可能性がございます。

改めて Google Bard とは何か

Google Bard は Google が提供するAIチャットbotです。 Google Bardは、自然言語の指示によって、データの解析、文書の自動生成を実施してくれます。特に、時間を要するクリエイティブな作業、例えば文書作成作業を大幅に短縮できる点が注目されています。また、テキストだけでなく、画像も同時に処理できるマルチモーダル機能も注目を集めています。 Google Bard について詳しく知りたい場合は以下の記事をご参考ください。

【解説】10分でわかる Google Bard (グーグルバード)の概要と使い方
Google Bard (グーグルバード)で始める Google Apps Script 爆速プログラム入門

Google Bard を業務で利用する場合のリスクと対策

情報の正確性と信頼性の問題

生成AIのリスクといえば、ハルシネーションが最初に思い浮かぶ方が多いと思います。 ハルシネーションとは、AIモデルが不正確または関連性のない情報を生成することを指します。
これは、AIがトレーニングデータに基づいて学習する過程で、実際の事実やデータとは異なる結果を出すことがある現象です。特に、自然言語処理(NLP)や画像生成の分野で顕著に見られ、例えば、テキスト生成AIが文脈に沿わない話題を挿入したり、画像生成AIが実在しない物体や奇妙な形状を作り出したりすることがあります。これらは、AIが持つ知識の限界や、トレーニングデータの偏り、アルゴリズムの制約などによって生じる現象です。
Google Bard に限らずですが、生成AIが生成する情報は常に正確とは限りません。特に、専門的な知識や最新のデータが求められる業務では、AIの回答を盲信せず、人間による確認が必要となります。

ハルシネーションの具体例

  • テキスト生成AIが、事実とは異なる歴史や科学の情報を生成してしまう。
  • 画像生成AIが、実在しない人物や架空の建造物を生成してしまう。
  • 翻訳AIが、誤訳や意味の歪曲を生じさせてしまう

プライバシーとセキュリティに関する懸念

業務で使用する情報は機密性が高いものが多いため、データの取り扱いには細心の注意が必要です。 Google Bard のプライバシーポリシーには、以下の通りユーザーのプロンプト情報を入力する上での注意点が明文化されています。

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逆にいうと、「ユーザーのデータが学習されるリスクがある」ということの裏返しになります。 Google Bard を業務で活用する場合は、この点を考慮した利用のためのガイドラインを設計する必要があります。しかし、人間が利用する以上、ヒューマンエラーが起きることは避けることが難しいのも事実です。私が日々の業務で Google Bard を活用しない理由こそ、まさにこのプライバシーポリシーの問題です。

チーム内での導入とトレーニング

生成AIを普段から使ったことがある方はわかると思いますが、生成AIから効果的な回答を得るというのは一つのテクニックになります(プロンプトエンジニアリングと呼ばれる技術です)。
仮に、この技術をトレーニングなしで組織に導入する場合、活用するユーザーと活用しないユーザーで大きな分断が発生する危険性があります。この場合の「活用できるユーザー」とは、私の経験上、下記のいずれかのような人を指します。

  • 自分自身で学習し、トライ&エラーを実施できるユーザー
  • そもそも自然言語の使い方がうまいユーザー

しかし、トレーニングなしでこのようなユーザーが生まれることに再現性はないため、導入を進めていくにはステップを設計する必要があります。例えば、まずは小規模なプロジェクトでの試用を行い、チームメンバーへのトレーニングを徹底、成功パターンを確立した上で横展開する方法です。

継続的な評価とフィードバック

運用を開始したあとは、ユーザーの利用率を確認することも重要です。継続的な計測を行わない場合、離脱するユーザーのフォローアップを実施することができないからです。 Google フォームでも十分ですので、計測・評価のためのアンケートを定期的に実施し、ユーザーの利用率を監視し、必要に応じてフォローアップを実施することでユーザーの利用率を上げることができると思います。

まとめ

Google Bard に限らず、生成AIの技術は日々進化しており、その進化は業務プロセスに大きな変化をもたらすインパクトがあり、 Google Bard のようなツールを活用することで、効率化だけでなく、新たなビジネスチャンスの創出にも繋がる可能性もあるかもしれません。しかし、 Google Bard のようなAIツールは、業務プロセスを根本から変える可能性を秘めていますが、その利用には明確なガイドラインと理解が必要です。

情報の正確性、プライバシーの保護、法的制約への対応は、生成AIを業務に統合する際の重要な要素です。また、チーム内での適切なトレーニングと継続的な評価を行うことで、AIのポテンシャルを最大限に活用し、業務の効率化とイノベーションを実現することができると思います。 Google Bard のような生成AIツールは、私たちの働き方を根本的に変えるツールになる可能性がありますが、そのためにはその力を正しく理解し、賢く活用することが大前提になることを忘れてはいけません。

森田 嶺
森田 嶺
大学卒業後、 AWS や Google Cloud 等、主にクラウドを基盤とした新規サービス開発の経験を経て、YOSHIDUMIに入社。Google ドライブ拡張サービス「Cmosy」「共有ドライブマネージャー」等、 Google Cloud を活用した自社サービスの開発に従事。現在、 Google 等が提供する生成AIを活用したサービスを開発中。
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