米国時間 2024年4月9日 9:00-10:30(日本時間 4月10日 1:00-2:30)、ラスベガスにて Google Cloud Next ’24 の基調講演が開催されました( Cloud Next ’24自体は4/9-11の3日間で開催)。今回のNext ’24は、数百社のパートナーが参加する過去最大級の規模で、基調講演の開始前から会場は大きな盛り上がりを見せていました。
弊社YOSHIDUMIからは、3人のメンバーが参加し、Next ’24の熱気を直に体験する機会を得ることができました。去年のNextは Google Workspace の話題が非常に多く、 Google Workspace を実際にお客様に届けるミッションを持つ弊社にとっても、非常に印象深いイベントになりました。Next ’24についても、去年同様 Google Workspace の話題が盛りだくさんで、実際に Google Workspace を活用する企業様にとっても興味深い内容がいくつも発表されたのではないでしょうか。今回も、Cloud Next で発表された Google Workspace に関する情報を報告します。
予想通り Gemini が話題の中心!
Google のサンダー・ピチャイCEOはVTRでの出演となりましたが、やはり Gemini に関する情報の発信が中心となりました。
コンシューマー向けの生成AI、及び生成AIを活用したアプリケーションについては、 OpenAI や マイクロソフト が先行している感は否めませんが、企業が自社のサービスを構築する、プラットフォームとしての生成AIについては、 Google がこれまで培ってきたテクノロジーの強みにより、多くの企業から支持を得ています。実際に、生成AIスタートアップの61%が Google Cloud を利用しており、生成AI関連のサービスを提供する90%のユニコーン企業が Google Cloud の顧客になります。
Google Workspace に関する発表のまとめ
前回のNext ’23と同じように、 Google Workspace の Vice President & General Manager の Aparna Pappu 氏から Google Workspace に関する情報が発表されました。
Gemini for Google Workspace の利用に関する定量的なレポート
Pappu 氏がまず最初にアピールしたのは、 Gemini for Google Workspace の精度についてです。Pappu 氏によると Gemini の「Help me write」を活用するユーザーの70%が、 Gemini から提案された内容を活用しているそうです。
「Help me write」とは、 Google ドキュメント や Gmailに組み込まれた Gemini がユーザーをサポートするために実装された、プロンプト入力インターフェースのことです。この入力インターフェースを通して、ユーザーは Gemini によって新たな価値を生み出すことができます。
また、 Gemini in Google スライドには、プレゼンテーションスライドに差し込む画像をユーザーの指示により自動生成する機能が備わっていますが、この機能を利用する75%のユーザーが Gemini が生成する画像をスライドに挿入しているとのことです。
Gemini for Google Workspace の事例報告
具体的に Gemini によって、どのように業務改善が実施されたのか、いくつか具体的な事例の紹介もありました(※1)。例えば、「 PEPPERDINE UNIVERSITY 」という大学の事例がとても興味深い内容でした。様々な言語を使う学生と教員に対して Gemini in Google Meet の翻訳キャプション機能を活用することで、言語の壁を超えたコミュニケーションを実現しているそうです。簡単な説明ではありますが、他にもいくつか事例紹介があったので、気になる方は実際に YouTube に公開されている基調講演の動画をご確認ください。
※1 詳細な内容を確認したい場合はコチラの動画の1時間6分付近をご参考ください。
Google Meet 用のAIセキュリティアドオンの紹介
新しいAIアドオンの紹介の前に、 Pappu 氏から Google Meet の品質に関するアピールが行われました。Pappu 氏によると、ある調査会社のベンチマークで、 Google Meet のパフォーマンスが Microsoft Teams や Zoom、 WebEx を上回ったそうです。
Google はこのパフォーマンスの面で評価の高い Google Meet に付随可能な、AI機能(要約・リアルタイム翻訳)とセキュリティに特化したアドオンを$10/user/monthで提供することを発表しました。パフォーマンスだけでなく、AIやセキュリティ、価格面でも競合優位性を示そうという Google の野心を感じる内容といえます。また、このアドオンは最新のセキュリティ機能が搭載されており、AIを活用したデータ保護を実現しているとのことです。
Gemini in Google Chat のデモ
今回の Next では、 Gemini in Google Chat のお披露目もありました。 Google Workspace の機能の中で、最も生成AIと親和性が高いツールだと思っていたため、「やっと発表か」という思いの方が強いかもしれません。
最初のデモンストレーションとして、 Gemini in Google Chat の使い方が実演されました。「魔法をお見せしましょう」という言葉を合図に、具体的なユースケースで、使い方を実演してくれました。
「新しい給与システムに関する2つの提案の評価を行う依頼を受けた」というユースケースの元、 Gemini in Google Chat を利用して、比較のためのレポートを生成するデモです。
ベンダーから受信した2つのドキュメントファイルは70ページもある大ボリュームのファイルです。右サイドパネルにこの2つのファイルをドラッグ&ドロップし、「2つの提案の費用を比較したい」と打ち込みます。すると、比較した内容のサマリーが出力されます。
アナログに対応する場合、2つのファイルを目視で確認した上で、サマリーを作業者自身が考える必要があります。ページ数のボリュームを考えると何時間もかかりそうな作業がこの機能によって、瞬間的に完了します。
とても素晴らしいデモだと思いましたが、一つ疑問が浮かびました。AIがファイルの内容を学習するタイミングはいつになるのでしょうか。ファイルをアップロードした瞬間に自動的に学習が実施されるのか、それとも、もう少しタイムラグがあるのか…それについては具体的な説明はありませんでした。
Vertex AI × Google Workspace を掛け合わせた独自のAgentの紹介
2つ目のデモは、 Vertex AI と Google Workspace のコラボレーションにより、ユーザーがより高レベルな成果を得ることができるという内容でした。 Google Workspace 上に存在するデータを Vertex AI で活用するという内容です。
デモのシナリオとしては、「年間の給付支給登録の期限が迫っているが、確認内容が膨大で超めんどくさいので Gemini でそれを簡単に解決する」です。例として Gmail に添付された動画と、メール本文が示されました。動画の尺は1時間近くあり、全てチェックするのはとても大変です。
デモでは、これらのコンテンツに対して操作が行われました。
まずは Gemini in Google Chat を利用して、要件の要約を実施します。 Googel Chat に対して、先程の動画と本文の要約を指示します。 Gmail や Chat は Gemini をハブに統合されているため、 Chat から Gmail 上のデータにもアクセスが可能です。
すると、先程の Gmail の内容を参照して、 Gemini が要約を実施してくれます。テキストだけでなく、動画にも対応しているのは非常に嬉しいポイントです。
それを踏まえて、 Vertex AI によって構築されたAgentが埋め込まれているWebサイトにアクセスします。 Vertex AI はユーザーの Google Workspace データにアクセスすることができるため、サイト上のデータと Google Workspace 上のデータを Gemini によって比較することができます。
また、比較した内容を出力したい場合、内容の要約を英語と日本語で行うように指示を出すと、2つの言語で要約が出力されます。40の言語に対応しているため、それ以外の言語でも出力することができます。
Google Workspace の新たなサービス「 Google Vids 」の発表
この日一番テンションが上がったのはこの発表かもしれません。 Google Workspace が新たなアプリケーション「 Googel Vids 」を発表しました。 Google Vids は Google スプレッドシートやドキュメントに並ぶ Google Workspace の新しいアプリケーションです。 Google Vids は簡単に説明すると「生成AIを活用したビジネス向け動画作成アプリ」です。このツールを利用することで、動画制作のプロセスを簡略化することができます。
ユーザーは、 Gemini の力を借りて、動画の元ネタとなるファイルを Google ドライブから参照することができ、動画制作のスキルがなくても、プロが作るような動画を短い時間で作成することができます。ユーザーが持つ画像ファイルや音声ファイルを組み合わせれば、より独自性の高い動画コンテンツを作ることができます。 また、 Google スライドのようなテンプレートも用意されているため、独自性に拘らなければ、より短い時間で動画を作成することも可能です。
また、 Google Vids は Google Workspace のツールの一つであるため、他のツール同様、他のユーザーとのコラボレーション機能も備えています。つまり、チームで動画制作のプロセスを共有することができます。素材を集める担当、構成を考える担当等、役割を割り当てることで、より効率的に動画制作にかかる時間を削減することが可能です。
Gemini for Google Workspace についてわかるセミナーを開催予定
今回の Google Cloud Next ’24の発表内容も踏まえて、弊社YOSHIDUMIではセミナーを開催する予定です。今回の Next の盛り上がりとは関係なく、最近 Gemini に関する注目度が上がっていることを実感しています。
実際、4月に開催した Gemini のセミナーでは140人の方の参加申し込みがありました。このトレンドは今後さらに強まっていくことを予想しています。
興味がある方はぜひコチラのリンクからご応募よろしくお願いします。
「働き方を革新し、AIを有効活用すれば 日常業務はもっと効率化できる!
Google Workspace の効果的利活用の促進セミナー」
4/18(木) 14:00~15:00 開催
まとめ
今回の Next ’24 は去年の Next から半年程しか経っておらず、この短期間で大きなアップデートを期待していなかった方も多いのではないでしょうか。 Google は良い意味で期待を裏切り、今回も多くの驚くべきアップデートを発表してくれました。今回発表があった内容は、すぐにユーザーが使えるようにはならないかもしれないですが、いずれはユーザーに提供される機能になります。今回の発表で改めて感じたのは、生成AIは単純に定型的な業務を自動化してくれるだけでなく、人間のクリエイティビティそのものをアップデートしてくれる側面もあることです。例えば Google Vids は抽象的なアイディアは持っているが、スキルがないユーザーの能力を引き上げてくれるかもしれません。
また、 Vertex AI と Google Workspace の親和性の高さは、新たなビジネスチャンスを想像させてくれました。アプリケーションからプラットフォームまで一気通貫でサービスを提供する Google ならではの強みなのではないでしょうか。 Gemini for Google Workspace がどのようにビジネスの世界を変えていくのか、今後が非常に楽しみです。