オンプレミス・クラウドとは
まずはオンプレミスとクラウドについて説明します。
オンプレミスとは、企業が自社でサーバーやネットワーク機器などのハードウェアを所有して、自社内で運用管理する IT リソースのことです。たとえば、システムを導入するサーバーやネットワーク機器などが挙げられます。
自社のサーバールームやオフィスの一角などにサーバーを設置してシステムを管理することもあるでしょう。オンプレミスのシステムは、企業の資産となるため、導入以降自社で全ての責任を負います。
セキュリティ対策として定期的な OS のパッチ適用、アプリケーションのバージョンなども自社が管理する必要があります。自社で全てを管理するため、セキュリティポリシーに合わせたカスタマイズなども自社が好きなように柔軟に変更可能です。
クラウドとは、クラウドサービスのことで、自社がハードウェア を持たず、外部から提供された環境でサービスを利用します。クラウドは IaaS PaaS SaaSの3種類に分かれています。IaaS はOS ネットワークまでの提供であり、自社はそこに好きなデータベース・アプリケーションを導入することが可能です。 PaaS は、OS・データベース環境までが用意されており、自社はアプリケーションのみを導入・管理します。 SaaS は、アプリケーションや機能が搭載されたサービスであり、自社はWeb ブラウザを使ってサービスを利用します。Google Workspace などが SaaS の代表例です。
オンプレとクラウドのメリット・デメリットから見た違い
オンプレとクラウドの主な違いについて、以下6つの視点でそれぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
- 特徴
- コスト
- 導入期間
- カスタマイズ性
- セキュリティ
- 障害対応
特徴
まずは、特徴について見ていきます。
オンプレミスの大きな特徴は、サーバーなどのハードウェア設備・OS・導入アプリケーションなどを自社で保有することです。ストレージやネットワーク環境の IT インフラも自社が用意します。
クラウドサービスは、物理サーバーを自社で保有しません。クラウドサービス提供会社が提供する AWS や Azure 、 Google Cloud などの環境を利用します。ネットワークやストレージなどについても自社で保有することなく、利用したい分だけ契約して利用します。
コスト
オンプレとクラウドは、コストの性質が異なります。
オンプレミスは、導入する時の初期コストが多い傾向にあります。なぜなら新しいシステムを導入する時、物理サーバーや NAS・UPS などの購入が必要だからです。さらに、サーバーに乗せるソフトウェアの購入、ソフトウェアライセンスの追加、設計・導入コストもかかるでしょう。新しいサーバーにシステムを移行する際も、同等の費用が必要です。
クラウドはオンプレに比べて初期コストがかかりませんが、契約プランに沿って定額支払い・もしくは従量課金に従って、利用した分の料金を支払うことになります。
このようにコストのかかり方が異なるので、自社の状況と照らし合わせてどちらが合っているか検討するのがおすすめです。
導入期間
導入期間では、オンプレよりもクラウドが優れています。
オンプレは注文してから物理ハードウェア・ネットワーク機器・ソフトウェアなどの調達が必要なため、在庫状況によっては数ヶ月以上かかることもあります。特に近年ではコロナ禍により特定のサーバーを確保するために、半年以上も待たされることもあります。調達後も、キッティング ( OSなどの標準機能のインストール・設定 ) やシステム構築の期間が必要です。
クラウドは、契約すればすぐに利用できます。インターネット環境が整っていれば、Web ブラウザでアクセスするだけで接続できるため、管理者はユーザーアカウント周りの設定のみで、短い期間でサービス稼働できるでしょう。
カスタマイズ性
カスタマイズ面では、クラウドよりもオンプレが優れています。
オンプレミスシステムは自社の資産であるため、自分たちで好きなようにカスタマイズできます。たとえば、利用状況に合わせてシステムリソース (CPU・メモリ・ストレージ領域など ) を自社で追加購入して追加することも可能です。また、OS 周りの設定変更やネットワーク変更などについても、自社で柔軟な設定変更が可能です。
クラウドサービスは、オンプレに比べるとカスタマイズ範囲が限られています(ただし、現状ではよほどの個別機能でなければクラウドでも実現可能)。さらに、サービス (IaaS・PaaS・SaaS) によっても、範囲が異なります。IaaS を利用すれば、契約プランに沿ったシステムリソースの追加が可能なものの、オンプレ程には柔軟に対応していません。SaaS を契約した場合は、提供されたサービスを Web ブラウザで利用するため、基本的に自社でシステムリソースやインフラなどの設定は、サービス提供会社にお任せとなります。
セキュリティ
セキュリティ面において、オンプレよりもクラウドが優れていることがほとんどでしょう。
サービスを運営する事業会社にもよりますが、たとえばGoogle Cloud など安全性の高いクラウド環境を利用する場合、同じ高度なセキュリティを自社のオンプレミスで実装するのは困難といえます。
オンプレミスは、社内のネットワーク環境を利用するため、自分たちでセキュリティ対策する必要があります。たとえば、機密情報を守るために、ファイアウォールや VPN 環境の設置、アクセス制御や認証などセキュリティポリシーの設定をして、外部・内部からの攻撃を防ぐことが大切です。
クラウドサービスでは、社外のネットワークを利用するため、セキュリティについてはクラウドサービスを提供する事業会社がセキュリティ対策を実装します。Google Cloud は、インターネットに公開しており、かつ企業の機密情報を取り扱う ため、Google 社が安全性の高い、高度なセキュリティを実装しています。
クラウドサービスのネットワークセキュリティ対策として、サービスを提供する事業会社に全てお任せするのではなく、自社でも外部に情報漏洩しないためにすべきことがあります。たとえば、機密性が高いデータをクラウド環境に格納する場合、サービスへのアクセスを社内の一部組織・ユーザーに限定するなどの専用線の設置など、自社に合ったセキュリティ対策を講じることが大切です。
障害対応
障害対応の違いについても見ていきましょう。
オンプレミスは、物理サーバーからソフトウェアまで、基本的に自社のシステム部門を中心に管理します。そのため、何らかの障害が発生したら自社内ですぐに対応・復旧まで全て実施しなければなりません。
クラウドは、サービスを提供する事業会社が運用保守を担当します。そのため、障害時も自社が対応する必要はありません。たとえば、クラウド環境で障害が発生してサービスにアクセスできなくなった場合、サービスを提供する事業会社からの復旧連絡を待つだけで済みます。
クラウドサービスの障害対応は、専門知識を持った専用担当者が行うため、自社が対応するのと比べて、復旧までの時間が早いケースも多いでしょう。
オンプレとクラウドの違いからわかる向き・不向き
オンプレとクラウド、それぞれの向き・不向きについてそれぞれ見ていきましょう。
- オンプレが向いているケース
- クラウドが向いているケース
オンプレが向いているケース
オンプレが向いている主なケースとして、以下を挙げます。
- 柔軟にカスタマイズしたい
- ハードウェア・ソフトウェア どちらも自社で保有したい
- 社内システム連携
- セキュリティ
オンプレは、ハードウェア・ソフトウェアを自社で保有したいときや、レジストリなどの細かな設定を変えたいなど、自分たちで好きなようにカスタマイズしたい、というときに向いています。
また、システム間の連携設定など、細かな設定も自社で行えるため、社内の他のオンプレミスシステムと連携したいときにも向いているでしょう。
自社でサーバーを保有したい、社内ネットワークのみに通信を限定したい、扱うデータの特徴などから社外ネットワークを使いたくないときに、オンプレの選択が望ましいといえます。
クラウドが向いているケース
クラウドが向いている主なケースとして、以下を挙げます。
- 初期導入コストを抑えたい
- サーバーを自社に置きたくない
- 運用管理を提供会社に任せたい
新しいシステム・サービスをコストを抑えて導入したいとき、クラウドが向いているといえます。契約すれば毎月(もしくは毎年)ランニングコストを支払うのみで済むからです。導入時に何百万もの費用がかかることもありません。
また、クラウドは数ヶ月間お試しで利用し、その期間に本格的に導入するかの判断も可能です。自社に合わないと判断すれば、契約を解除するだけで済み、その後費用は発生しないでしょう。
また、オフィススペースなどの面から自社に物理サーバーを設置することが難しい、システムの運用管理も自社担当者ではなく、サービス提供会社に任せたい、というときにもクラウドが適しています。
オンプレからクラウドへの移行を成功させるポイント
オンプレミスからクラウドへ移行を成功させるためには、以下3つのポイントを意識することが大切です。
- 運用体制・ルール整備
- システム連携範囲の確認
- コストに捉われない
運用体制・ルール整備
1つ目のポイントは、運用体制・ルール整備です。
オンプレとクラウドでは、提供形態・ネットワーク環境・運用管理などが大きく異なります。そのため、オンプレと同じ運用体制のままでは、クラウドの機能を最大限に活用できない可能性が高いです。
例えば、今までネットワークなどのインフラまわりの運用保守を担当していた担当者は、クラウド移行後は運用管理ではなく、社内の IT・ネットワーク戦略など、別の役割設定が必要になるでしょう。クラウドに移行する際は、クラウドサービスをベースとした、運用体制の整備・ルールを一から構築しましょう。
システム連携範囲の確認
2つ目のポイントは、システム連携範囲の確認です。
クラウド移行後は、従来オンプレミス同士で連携している社内システムに対して、クラウド移行後も連携が必要か確認することが大切です。
クラウドサービスによっては公開されている API を利用してサービス・システムとの連携ができる可能性もあります。そのため、利用したいクラウドが自社システムに対応しているか、連携するためにどのような手順が必要かも確認しましょう。
クラウドと連携させたい社内システムを洗い出すと共に、今後連携する可能性がある他クラウドサービスとの連携範囲を確認することも大切です。
コストに捉われない
3つ目のポイントは、コストに捉われないことです。
コスト削減のためにオンプレからクラウドを利用したい、と考える企業も多いでしょう。しかし、クラウドは一定のランニングストや運用保守料金がかかるため、選択したプラン・オプションなどによって、当初想定していたよりもコスト効果を得られないこともあります。
たとえば、導入段階に、VPN などの専用線を設置してアクセス制限したい、毎週・毎月のサービスや OS シャットダウンを提供会社に依頼したいなどと言う場合は、その分運用保守料金が追加されるでしょう。
導入当初は手厚く運用保守を依頼して、慣れてきたら必要な部分のみに限定してサービス提供会社に保守を依頼することも可能ですので、コスト効果に関しては長期視点で考えることをおすすめします。
オンプレとクラウドの違いで迷ったらハイブリッド構成から始めるのもおすすめ
本記事では、オンプレとクラウドの違いについて、向き・不向きや、クラウドへの移行ポイントを紹介しました。
クラウドへの移行になかなか踏み切れない企業もまだ多いかもしれません。
オンプレは自社の資産として保有するため、カスタマイズ性も優れています。しかし、今後もオンプレが続いていくと、自社内のリソース不足に対応しきれなくなる可能性も考えられます。システム部門担当者の業務負担も増えていく一方でしょう。
クラウドにしたいけれどもリスクを感じているなら、移行の第一段階として一部のシステムのみクラウドにする、というハイブリッド構成にすることもおすすめです。
ハイブリッド構成では、高いセキュリティレベルが求められるシステムをオンプレミスにして、高いセキュリティレベルが必要なく稼働時間が少ないシステムはクラウドにするなど、といった方法で始めることもできます。
Google Cloud はセキュリティ面においても安全性の高い環境で利用できます。障害時もGoogle 社が迅速に対応してくれるため、自社システム担当者の緊急時対応も軽減できるでしょう。
オンプレからクラウド移行で悩んでいる担当者は、ぜひ利用を検討してみてください。
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