アイアンマンに登場する生成AI「JARVIS(ジャービス)」
そして、その本の中で興味深い一つの未来予測がありました。それが「アイアンマンのAIは実現まで第一歩」という章です。「アイアンマンのAI」については、マーベルが好きな方ならご存知だと思います。そう、「JARVIS(ジャービス)」です。ジャービスは主人公であるトニー・スタークが開発したAIで、技術者でもあるトニーと共に、新しい技術の設計と開発を行います。本にはこう書かれています。
ジャービスはスタークにとって、何十というエクスポネンシャル・テクノロジーのユーザー・フレンドリーなインターフェースであり、イノベーションを生み出すための究極のロケット燃料だ。このような性能を持つAIが実現すれば、イノベーションの「ターボブースト」などという生易しい言葉では表現できない事態になる
「2030年:すべてが加速する世界に備えよ」著:ピーター・ディアマンディス
ジャービスは、トニーからの指示で設計や開発を行うこともありますが、トニーに対して最善策の提案も行います。トニーはテクノロジーによって、アイアンマンの能力を向上させていきますが、ジャービスなしにはアイアンマンの技術革新はありませんでした。これこそ、まさに我々の世界に浸透しつつある、生成AIの姿そのものです。
Google が提供する Gemini はJARVIS登場の幕開け?
先日、 Google I/O 2023にて、「 Gemini for Google Workspace 」が発表されました。 Google Workspace に組み込まれた生成AIが、ユーザーの業務をサポートしてくれる機能です。これはまさにトニーとジャービスの関係そのものです。 もちろん、現在の Gemini にはジャービスレベルの性能はありませんが、将来的にジャービスのような機能になっていくのでは、と思わず想像を膨らませてしまいます。 Google Workspace ユーザー個別にカスタマイズされたAIが自分たちの指示で業務を実行してくれたり、逆に率先的に提案してくれたり・・・このような世界が訪れる最初の一歩になることを Gemini には期待してしまいます。Google Workspace と生成AI、この2つが組み合わさることによって、どのような変化が起こるのか、現時点でわかっていることを今回は解説してみようと思います。
Gemini が実装されている Google Workspace とは何か
Google Workspace は、個人や組織における目標の達成、及びより多くの成果創出を支援するためのソリューションツールです。 Google Workspace はスケジュール管理やストレージ、データ共有機能等、一般的なグループウェアとしての機能をもちろん実装していますが、 Google Workspace の一番の強みは、個人・チームにおける生産性の向上とコラボレーションに特化した数多くの機能です。また、 Google 各サービスへのAI機能の実装については、 今回の生成AIムーブメント以前から Google は力を入れており、全世界30億人いると言われる Google Workspace ユーザーはそれらの恩恵を受けてきました。
※ Google Workspace は全世界で1,000万企業に導入されています。
Gemini for Google Workspace とは?
Gemini for Google Workspace は Google がこれまで培ってきたAIに関する技術力を Google Workspace ユーザー向けに最大化した機能であるといえます。 Gemini for Google Workspace を理解するには、以下の動画を見てもらうのが一番手っ取り早いと思います。おそらく直感的に、 Gemini の凄さを理解することができるのではないでしょうか。
Gemini の読み方は?
以前 Google の公式Xアカウントが「 Gemini 」の読み方を「ジェミニ」とポストしていましたが、「ジェミナイ」という呼び方も単語としては間違っていないようです。私個人や周りのメンバーは「ジェミニ」と呼んでいます。
Gemini for Google Workspace はいつから使える?
Gemini for Google Workspace は去年の2023/08/30から既にサービスの提供が始まっています。 既に Google Workspace を代理店経由で契約している場合、 Gemini for Google Workpace は契約する代理店経由での購入が必要になります。弊社YOSHIDUMI(吉積情報株式会社)と Google Workspace をご契約している場合は、コチラにお問い合わせお願いします。 Gemini for Google Workspace を社内導入するためのコンサルサービスや、 Google Workspace アカウントで複数の生成AIを活用できる弊社のサービスについてもご紹介させていただきます。
Gemini for Google Workspace の日本語版リリースは2024年9月!
2024年8月1日に開催された Google Cloud Next Tokyo 2024 の基調講演にて、 Gemini for Google Workspace のサイドパネル機能の日本語化対応が2024年9月にリリースされることが発表されました。細かい部分の日本語化については、少しだけ先になりそうですが、サイドパネル機能は、 Gemini を利用する上で最も利用される可能性が高いインターフェースであるため、実質 Gemini for Google Workspace が日本語化されたという解釈で問題ないかもしれません。サイドパネル機能の詳細についてはコチラをご参考ください。
Gemini for Google Workspace は顧客のデータを学習に利用しない
Google はプライバシーポリシーにて、顧客情報をAIのトレーニングに利用しないことを明言しています。企業のデータは企業のものとして、安全にAIを活用することができます。 Google Workspace のデータ保護に関する方針についてはコチラをご参考ください。
Gemini for Google Workspace の価格は?
残念ながら、 Gemini は Google Workspace ユーザーであるなら誰でも使える機能ではありません。あくまで Google Workspace のアドオンとして提供されます。 Gemini for Google Workspace の価格について詳しく知りたい場合は、コチラの記事をご参考ください。
Gemini for Google Workspace の機能紹介
現在利用可能な Gemini for Google Workspace のいくつかの機能についてご紹介します。
プロンプトからスライドの生成を行う
ユーザーはサイドパネルから、「こういうスライドを作ってください」と指示を出すだけで、 Gemini は Google スライドを自動生成してくれます。この機能を利用することで、スライド作成の工数を大幅に削減することができます。
プレゼン資料用にオリジナル画像を生成する
プレゼンテーション資料を作成する場合、「こんな画像が欲しい」という瞬間がありませんか?そんな時は Gemini を利用して、存在しない画像を生成することができます。簡単なプロンプト(「Help me organize」)から指示を与えるだけで、画像を簡単に生成することができます。この機能を利用すれば、あなた独自の個性的なプレゼンテーションを実現することができます。
Google Meet で言語の壁を飛び越える
海外の方とMeet 会議を行う場合、言語的スキルの問題で話についていけなくなるケースがあります。 Gemini ( Duet AI ) は300の言語の中から適切な言語を自動抽出し、リアルタイム翻訳を実施します。Gemini ( Duet AI ) によって、コミュニケーションにおける言語の壁を克服することができます。
Meet 会議に遅れてきたメンバーをフォローする
Meet の会議に遅れて参加するというのは誰しもある経験だと思います。そう言った時に、Gemini ( Duet AI ) があなたをフォローします。遅れてきたメンバーは Gemini にここまで議論してきた内容のサマリーをチャットで確認することができます。これまでは議論に追いつくのは一苦労でしたが、これからは Gemini が全てのサポートを行なってくれます。
※ デモ動画については以下をご参考ください(1:28:55付近)。
スプレッドシート上でのデータ解析を加速化する
Gemini for Google Workspace は、スプレッドシート上のデータ分析を加速化します。具体的には以下のような機能を提供します。
セル内のデータの文脈を理解しラベルを自動的に割り当てることができます。結果として、ユーザーの手作業によるデータ入力の負担を軽減します。
- スケジュール管理が必要なタスクに対してカスタムプランを提示
スプレッドシート画面の右側に配置される「Help me organize」を利用し、スケジュール管理が必要なタスクに対して、カスタムプランを生成することができます。この機能を使えば、プロジェクトチームのマネージャーも簡単に整理されたアクションプランを簡単に作成することができます。
Google Meet のビデオ会議で独自の背景画像を生成する
これは非常に遊び心のある機能です。本機能は Gemini がビデオ会議で利用する背景画像を独自に生成してくれる機能です。ユーザーのプライバシーを保護するという役割はもちろんありますが、ビデオ会議の参加者に大きなインパクトを与える手助けをしてくれます。また、よりユーザーの個性が表現できるようになり、相手の理解を深める効果も期待できます。
プロンプトから文書作成をおこなう
これまでの人生で、読書感想文や論文等の文書作成において、内容が思いつかずに筆を止めてしまった時間を累計すると、どれくらいの時間になるのでしょうか?この機能を利用すれば、これからの人生においては、これまでのような無駄な時間の浪費を防ぐことができるかもしれません。なぜなら、 Google ドキュメントに組み込まれた Gemini が私たちの執筆活動をサポートしてくれるからです。書きたいトピックを Gemini に伝えるだけで、あっという間に下書きを生成することができます。 Gemini とのコラボレーションにより、必要に応じたサポートを受けながら、文書の作成を進めることができます。
また、Google ドライブ上に存在する、スライド資料やスプレッドシートから、新たな文章コンテンツを生成することもできます。これにより、企業が資産として保持する情報を新たなアウトプットして活用することができるようになります。
※ デモ動画については以下をご参考ください(1:26:04付近)。
Google ドライブ上の複数ファイルの中身をまとめて要約する
Google ドライブには私たちがこれまで培ってきた資産が数多く保存されていますが、 Gemini for Google Workspace を利用すれば、これらの資産を活用することがきます。ユーザーは Google ドライブ上に保存される複数ファイルの中身をまとめて要約することができます。一つ一つのファイルを開いて、目視で確認する必要はありません。全ては Gemini によって一瞬で処理されます。
文書コンテンツを別ファイルの内容とマージする
Google Cloud Next Tokyo のデモでこれが一番驚きました。生成AIで文書を生成した時に、想定通りの内容の記事が作成できないことがあるかと思います。そういった時に、新たなファイルを Google ドライブからインポートすることで、既にある記事コンテンツに対して、新しいファイル内容から文書の調整を行ってくれます。これは非常に便利な機能ですが、いよいよここまでできるようなるのか・・・という恐怖すら覚えます。
※ デモ動画については以下をご参考ください(1:27:05付近)。
Gemini for Google Workspace の使い方
「 Gemini を使ってみた」系の記事もいくつかリリース致しましたので、ご興味がある方は是非以下の記事についてもご参考ください。
Gemini for AppSheet とは何か
もう一つ紹介したい機能があります。それは「 Gemini for AppSheet 」です。この機能は Google Workspace のワークフローを構築できるという意味で、今回のテーマにも少し関連する機能と言えます。この機能の説明をする前にまずは AppSheet について説明をします。
AppSheet は Google が提供するノーコードツールです。ユーザーはWebのGUIを利用し、ノーコードで業務アプリケーションを開発することができます。 AppSheet で私もいくつかアプリを作成したことがありますが、コーディングを必要とする開発と比べると、リリースまでのスピードは圧倒的です。複雑な要件のアプリケーションを開発することは難しいですが、日常の業務で散見される簡易な業務課題を解決するのであれば、 AppSheet は非常に効果的です。
この AppSheet に対して、さらに開発スピードを高めるような機能が実装されました。それこそが Gemini for AppSheet です。ユーザーは、Gemini が提供するプロンプトを利用して、会話形式でアプリケーションを開発することができます。 Gemini の登場によって、 AppSheet はこれまで以上に「ノーコード 」感が強まったと言えるかもしれません。
まとめ
Google は「人がどうAIを活用し生産性とクリエイティビティを実現するか」というコンセプトを重要視しています。あくまでAIを活用するのは人であり、AIはサポートする存在という位置付けです。 Google はAIの開発方針として「AI の基本理念」を掲げており、今回の機能はまさにこの理念に沿った機能となっています。今回紹介した機能は2023年3月以降、何十万人ものユーザーにテスターとして参加してもらいつつ、フィードバックをもらいながらアップデートを続けています。テスターの対象は、個人や企業、教育機関まで様々です。近いうちに、これらの機能は一般向けにもリリースされると思いますので、 Google Workspace を利用するユーザーにとっては非常に楽しみなイベントになりそうです。
※今回紹介した機能含めた、今後リリース予定のAI機能については、 Google Workspace の管理者が組織毎に制御できるように設計されています。 Google Workspace の管理者は計画的にユーザーに活用を促進していくことが可能になっています。