Bard が Gemini へと名称変更
2024年2月8日、これまで「Bard」と呼ばれていた生成AIモデルは、「Gemini」に改名されることが発表されました。
最上位の対話型生成AI「Gemini Advanced」も発表し、日本では月額2900円で提供を開始しました。現在、言語は英語のみですが順次日本語にも対応する予定となっています。
また、GeminiやGemini Advanced が使えるスマートフォンアプリが提供されます。
https://japan.googleblog.com/2024/02/bard-gemini-ultra-10-gemini.html
本記事では、記事公開時点での「Google Bard」の情報について執筆しているため、現在の内容と異なる点がある可能性がございます。
Google Bard を導入する前に知っておきたい7つのポイント
① Google Bard に関する基本知識とマクロの観点の重要性
Google Bard を組織で活用していくには、まずは推進する側が Google Bard を理解している必要があります。ただ、基本的な使い方を知ることも重要ではありますが、今後ジェネレーティブAIがグローバルでどのような方向に進んでいくかを捉えていくことも重要です。Webで検索すると、大部分はジェネレーティブAIの使い方に関する記事が溢れていますが、ジェネレーティブAIは法整備も含めて、まだまだ成長過程のテクノロジーであるため、「利便性」だけでなく、マクロの観点からジェネレーティブAIの動きを観測していく必要があります。例えば、前述した日本政府の「AI戦略会議」についても、突発的に日本政府から生まれた戦略ではなく、それ以前に開催されたG7(主要7カ国首脳会議)サミットで決定した方針に沿って、この会議自体は生まれています。この動きだけを見ると、各国は一致団結しているように見えるかもしれないですが、各国それぞれが思惑を持った上で、これらの方針は決定されています。今後、各国の駆け引きによっては、私たちのジェネレーティブAIの活用戦略にも何かしらの影響が発生する可能性もあります。私たちは、テクノロジーの利便性だけでなく、そのテクノロジーがどのような方向性に向かっていくのか、グローバルの観点で俯瞰的に捉えていく必要があります。
② Google Bard の開始方法
無料の Google アカウントのユーザーは、利用規約に同意さえすれば、すぐに Google Bard を開始することができます。しかし、 Google Workspace のユーザーに関しては、 Google Workspace の管理者がユーザーに対して利用許可の設定を行わない限り、利用することはできません。
Google Workspace で Google Bard を有効化する手順については、コチラの記事をご参考ください。
【解説】10分でわかる Google Bard の概要と使い方
③ Google Bard の利用規約とプライバシーポリシー
Google Bard でユーザーのデータがどのように利用されているのかも確認が必要です。 Google Bard には以下2つの利用規約が適用されます。通常の Google の利用規約に加えて、ジェネレーティブAIに特化した利用規約が存在します。 Google Workspace の管理者はまずは利用規約の内容を確認した上で、ユーザーに利用を許可するのか判断する必要があります。注意が必要なのは、 Google は Google Bard でユーザーが送信したプロンプトをトレーニングに活用することをプライバシーポリシーに明記している点です。ビジネスで活用する上でその点をどう考え、どう対策していくのか、注意が必要です。
④ ユーザー教育の重要性
Pwcが実施した「生成AIに関する実態調査2023」というアンケートをご存知でしょうか。このアンケートの結果については、私も大きな衝撃を受けました。ここまで盛り上がってきたジェネレーティブAIのムーブメントは、日本中を巻き込んだトレンドではなく、一部のアーリーアダプター層が盛り上げていたものだったのだと実感しました。あくまで、テクノロジーのインパクトによって、これまで以上にアーリーアダプターの母数が多かっただけであり、日本全体で見ると、まだまだ未知のテクノロジーであると言えるのかもしれません。PwCが実施したアンケートの結果は、現場にジェネレーティブAIを導入することが如何に難しいのかを示す結果であると言えます。だからこそ、現場に Google Bard の活用を推進するためには、継続的、且つ計画化された導入プロセスが必要であると言えます。
⑤ 最も生産性が向上するポイントを理解する
ジェネレーティブAIの強みは、人間の視点から見た時に「クリエイティブなアウトプット」を創出してくれる点にあります。つまり、独創的な企画力が問われるような職種において、最も大きな成果を生み出すことができます。例えば、マーケターが業務として実行するコンテンツマーケティングやセミナー、メルマガといった施策は、その時の状況によってクリエイティビティが変化していきます。そういった業種においては、効果的な労働生産性の向上を実現できると思います。他にも、営業が作成する顧客向けの提案資料、エンジニアが実装するソースコード等、あらゆるクリエイティブな作業がジェネレーティブAIによって、業務効率化されることが期待されています。
⑥ Duet AI for Google Workspace との違い
Duet AI for Google Workspace は、ユーザーが行う Google Workspace 上の業務をAIによってサポートする機能です。 Duet AI はユーザーから送信されたテキストによる指示を理解し、指示に応じたサポートを実施します。 Google Bard は現状テキストレベルのアウトプットしか行うことはできませんが、 Duet AI は具体的な業務まで実施してくれます。ちなみに、 Google Bard には大規模言語モデルの基盤として、PaLM2が採用されていますが、 Duet AI for Google Workspace については、PaLM2が基盤となっている事実は見つけることができませんでした。
Duet AI for Google Workspace について詳しく知りたい場合はコチラの記事をご参考ください。
Duet AI for Google Workspace とは何?Google Bard との関連は?
⑦ Google は汎用モデルの強化よりも専門性に重点を置いている
Google は大規模言語モデルの性能を上げることに拘ってはいません。重要なのは、ユーザーの生活やビジネスの助けになるAIを提供することであり、全ての分野において精度の高いアウトプットは必要ないからです。なぜなら、ビジネスにおいて求められる情報には専門的なものが多く、決して ChatGPT が学習している規模のデータセットは必要がないからです。また、LLaMa(※2)のオープンソース版の進化を見れば分かる通り、企業が大規模言語モデルを継続的に改善していくよりも、オープンソース化した方が、開発コストの面でも、性能の面でも、成長速度が優れていることがわかってきています。 Google が目指すのは、前述したように「ユーザーの生活やビジネスの助けになるAIの提供」であり、汎用モデルを拡大していくことではありません。私たちも今以上に労働生産性を向上させたいのであれば、AIを実装した、今以上に価値のあるサービスを提供していくのであれば、ファインチューニングされたAIの活用を将来的に想定しておく必要があるのではないでしょうか。
※2 META社が開発した大規模言語モデル。オープンソースとしてOpenLLaMAの提供も行っている。
まとめ
Google Bard を組織全体で活用していく場合、一時的な導入プロセスだけでは意味がないかもしれません。 「 Google Bard が継続的に利用されているのか」を継続的に評価、調整する仕組みが必要になると思います。 Google Workspace の管理者は、 Google Bard を利用するユーザーのパフォーマンスを定期的に監視し、必要に応じてトレーニングやサポートを提供することが求められます。 Google Bard は、ビジネスコミュニケーションを効率化し、生産性を向上させる強力なツールですが、その力を最大限に活用するためには、適切な計画と準備が不可欠です。